画像クリックで拡大
2011.03.19
3月19日(金)、奈良教育大学で「障がい者制度の改革を推進する地域フォーラム・奈良」が行われました。
350人の参加者が集まり、50人の要員がフォーラムを支えました。実行委員会の呼びかけ人となったのは約40団体。制度改革に「私たち抜きに私たちのことを決めないで」と切実な要望が集まりました。
フォーラムでは、障がい者制度改革推進会議議長代理(きょうされん常務理事)の藤井克徳氏から「障害者基本法の改正と当面の課題」を総合福祉部会部会長の佐藤久夫氏から「障がい者総合福祉法をめぐる検討の動向」の基調講演がありました。
休憩を挟んで身体・精神の当事者、障害者団体、弁護士など8人から「奈良からの発言」を行い、「奈良アピール」が採択されました。
以下、「奈良アピール」と、きょうされん奈良支部「障がい者制度改革、推進会議への要望・意見」を掲載します。
********************************************************************
◆奈良アピール
「障害者の制度改革を推進する地域フォーラム・奈良」アピール
3月11日、東日本大震災による想像を絶する被害に遭われた被災者のみなさんに、心より、哀悼の意を表します。今後の復興にむけた連帯の決意を込めて、今日、わたしたちは、障害者の制度改革を推進する地域フォーラム・奈良に集いました。
「わたしたちのことをわたしたち抜きに決めないで」と、県下各地から、身体、精神、知的、聴覚、視覚、内部障害、発達障害、難病など様々な障害のある人たちが集いました。またその家族、福祉関係者、研究者、教職員、行政関係者等々障害者福祉・教育にかかわる幅広い人たちも大勢集いました。
障害者自立支援法は、政権交代や、奈良を含む14地裁で提訴された「障害者自立支援法違憲訴訟」の和解を経て、その廃止が正式に決定されました。一昨年12月には首相を本部長とする障がい者制度改革推進本部が設置され、その下に障害のある当事者や家族・専門家等によって構成される同推進会議が発足し、障害に関する国内法の総点検や新たな法整備にむけ議論が開始されました。さらに政府は、昨年6月の閣議において、今年中に権利条約に基づく障害者基本法の抜本改正、来年2012年には、自立支援法に代わる総合福祉法の制定、2013年には障害を理由とする差別禁止法の制定を政府方針として確定しました。
今、私たちは固唾を飲んで注目しています。
半世紀遅れといわれている日本の障害者制度が、本当に世界水準にまで引き上げられるのか。
障害のある私たちの暮らし、仕事、医療、教育、年金、アクセス等などは、どう「権利」として保障されるのか。
今、18年ぶりに障害者基本法の抜本的な改正が審議されようとしています。人権保障の基本法へ、全面的な見直しが求められています。しかし、その改正は一筋縄ではなく、相当厳しい局面も予想されます。
今こそ幅広いつながりと共同で、障がい者制度改革への関心を掘り起こし、国民の理解と賛同、支援の輪を広げねばなりません。今日のこのフォーラムをこれから奈良での運動の新たな出発点にしていこうではありませんか。
わたしたちは、ここ奈良の地で、障害のある人たちのかけがえのない願いを原点に地道な活動を営々と築いてきました。その上にたって、新しい奈良の障害者福祉の未来を拓こうではありませんか。すべての人が、人として尊重される社会を実現し、障害のある人たちがその一員として社会参加し、精一杯の生を輝かせて人生を送れるように。
ともにがんばりましょう。
2011年3月19日
「障害者の制度改革を推進する地域フォーラム・奈良」参加者一同
****************************************************************
◆きょうされん奈良支部「障がい者制度改革、推進会議への要望・意見」
2011.03.19 障がい者制度の改革を推進する地域フォーラム・奈良
(1)速やかに応益負担をなくしてください。
応益負担は、障害を自己責任とする、世界に類を見ない制度です。サービス利用は「益」ではなく「権利」だとして、奈良でも障害者自立支援法違憲訴訟を行い「基本合意文書」に基づく和解をしました。介護保険の統合を前提とした自立支援法の延長ではなく、締結した文書を遵守した新法作りをしてください。
(2)地域活動支援センターを含む小規模作業所問題を根本的に解決してください。
奈良県では、新体系への移行率が68.5%で全国平均の74.7%を下回ります。移行するにもできない厳しい運営上の問題があり、地域活動支援センターの補助金も少なく、とても法内事業所とはいえない水準です。国の財政責任を明確にし、新たな法体系のもとで根本的な解決をしてください。
(3)「雇用か福祉か」の分立した法律でなく「雇用も福祉も」含めた法律作りをしてください。
奈良の生活実態(平成21年度 障害者実態調査:奈良県)では、半数(47.7%)が「生活するのにぎりぎりの収入/生活費が不足」と報告されています。尊厳をもって働き、生計の維持に見合う所得が保障出来るように、社会が雇用を支援する仕組みをつくってください。また、社会保障・福祉の支援を受けながら、継続的雇用を可能にする仕組みを整備し多様な就業の形態、場を作り出し、仕事を確保できるようにしてください。
(4)権利条約が示した「障害のある人と家族の相当な生活水準保障」を制度化してください。
きょうされんでは、2010年12月に家族の介護状況と負担についての緊急調査の結果をまとめました。高齢の親が高齢の障害のある人の介護に不安と負担を感じている実態が明らかになりました。家族依存の制度体質を脱却するために扶養義務制度の撤廃を含む民法の改正を行ってください。障害のある人の必要に応じた支援、公的制度として充実し、地域での多様な暮らしの場、総合的な生活相談・支援の拠点をつくってください。