2012.03.01
民主党厚生労働部門会議(座長・長妻昭元厚労相)は29日、障害者自立支援法の改正案「障害者総合支援法」を了承した。国が自立支援法違憲訴訟団と約束した同法の廃止は見送られ、内閣府の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が新法のための素案「骨格提言」もほとんど反映されていない。県内の障害者からは、廃止の約束をほごにした厚労省や民主党への怒りが渦巻き、「今は怒りでいっぱい」「約束破り」などの声が上がった。
さいたま市の障害者団体の同市障害者協議会(16団体)と同市障がい者施設連絡会は同日、緊急学習フォーラムを同市浦和区内で開催。大雪の中、電動車いすなどで駆け付けた障害者ら約150人が参加した。
フォーラムでは、同連絡会の斎藤なを子事務局長が、2010年1月の訴訟団の基本合意文書締結以降の経過を報告、骨格提言、厚労省の改正案の内容について説明した。
応益負担を原則とする自立支援法の廃止と新法制定は、10年6月に閣議決定された。11年8月、部会の総意で出した骨格提言には、国連の障害者権利条約と違憲訴訟の基本合意文書という二つの指針がある。
提言には「障害のない市民との平等と公平」など、目指す6ポイントがある。提言の理念では“障害者を権利の主体”として位置づけているが、改正法では保護の対象とした自立支援法の性格がそのままで変わっていない。
改正案では、提言の法定事項はほとんど取り入れておらず、障害者のニーズを基にした支援の選択と決定などは検討課題とされた。
この日、参加した社会福祉法人「いーはとーぶ」の嶋谷伸一郎さんは「政府が支援法廃止を撤回したのは約束破り」と指摘。同訴訟元原告補佐人の秋山宇代さんは「自立支援法の約束通りの廃止を国会議員たちに訴えてきたが、私たちの代弁者という思いは打ち砕かれた」と発言した。
同市手をつなぐ育成会の宮部幸子さんは「重度の知的障害の娘がいる。障害があっても当たり前に暮らせるようにするのが国の役割」と力を込めた。市肢体不自由児・者父母の会の会沢葉子さんは「会の親たちは子どもの障害が重くて日常のことで精いっぱい。声を上げたくてもなかなかできない。こうした実態を支える優しい法律や制度であってほしい」と訴えた。会場からは、精神関係の家族会など、市内の各団体から怒りの声や団結を願う発言が相次いだ。
厚労省は今国会に改正案を提出する。施行は13年4月。同省は改正案について、法律の理念に「共生社会の実現」などを加え、名称を「障害者総合支援法」と改めることから「自立支援法の事実上の廃止」と位置付けているが、この日の部門会議では小沢一郎元代表に近い議員らから「法改正でなく廃止にすべきだ」との異論が相次いだ