2012.10.01
きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)は、障害のある人も誰も、障害のない人も
誰もが生きやすい社会をめざして、ソーシャルアクションを展開しています。
日本の障害の重い人の現実
障害のある子どもを親が手にかける、一家そろって心中を図る。21世紀となって10年経った今でもこうした悲惨な報道は後を絶ちません。その背景を一言で言えばこうなります。「障害のある人の極めて貧しい収入、家族に依存した介護による毎日は、ギリギリの生活になっている」。言いかえれば、親など家族が居なくなってしまえば、途端に生活を維持できなくなる「生活保護予備軍」「社会的入院・入所予備軍」ということです。それが私たちの国の障害の重い人のおかれている現実です。私たちきょうされんが他の障害者団体と協力して、福祉的就労の利用者(以下、障害のある人)の地域生活の実態を調査した結果の概要をここに報告します。
<2人に1人は相対的貧困以下、99%は年収200万円以下>
<生活保護の需給率は、障害のない人の6倍以上>
<6割弱が「親と同居」>
<低収入ほど社会と遠ざかる>
<結婚している人は4%台>
<2人に1人は相対的貧困以下、99%は年収200万円以下>
年収100万円以下の障害のある人たちは56.1%、112万円の「貧困線」を下回る相対的貧困とよばれる状態に、2人に1人がおかれています。また、年収200万円以下のいわゆるワーキングプアの状態にある人は、国の調査で22.9%を占めるとされていますが、障害のある人の98.9%、100人のなかで99人がこの状態におかれています。
<生活保護の需給率は、障害のない人の6倍以上>
1996年以来増え続ける生活保護受給者。保護を受けている人の割合は、1.52%となっています(2010年時点)。一方で、障害のある人が生活保護を受けている割合は9.95%。実に6倍以上です。
【事例】 神奈川県で単身生活を送るAさん。精神障害。企業で就労していましたが、人間関係や仕事の進め方で悩み退社、現在通所型の就労訓練施設に通っています。親との関係が悪く、同居や援助は望んでいません(兄弟にも障害有)。収入は月約10万円の年金のみ、年収にすると約120万円程度。現在働いていた時の貯金を切り崩して生活していますが、この状態が続けば生活ができなくなり、生活保護にならざるを得ません。
<6割弱が「親と同居」>
10代から40代前半までの約6割の障害のある人が親との同居の生活を送り、40代後半から50代前半までの割合は4割に減るものの、「親との同居」の割合はもっとも高くなりました。つまり、障害のある人は生まれてから50歳を迎えるまで、「親と同居」している人が半数を占めるのです。その背景には、本人の低収入があり、親と同居せざるを得ない状況がうかがえます。これは、障害のない人が20代前半から30代後半に一人暮らしが増え、その後結婚等により家族同居の割合が上昇するのと、大きく異なる生き方になっています。
【事例】 茨城県に住む40代のBさん、白杖を使うほどではない軽度の視覚障害があります。一般就労を本人は望んでいますが、年齢的なこともあり、現状では難しい状況です。軽い障害のため、障害年金は受け取っていません。年収は25万円程度。70代の母親と二人暮しですが、母なき後の不安は常につきまとっています。
<低収入ほど社会と遠ざかる>
障害のある人の暮らしぶりは収入によって大きく変わっていきます。収入と「休日の主なすごし方」、収入と「休日だれとすごしているか」の関係からは、収入の増加に伴い「趣味」、「友達とすごす」が増えていました。収入が増えるにしたがって、家族に支えてもらい、家族のみと家にいるだけの生活から、自らの選択による生活、他の人々とも交わりながらの生活へと広がりがみられます。逆に収入が低いほど、親と過ごす時間が増えて、交友関係が狭まっていきます。
<結婚している人は4%台>
「配偶者との同居」という問いで、結婚している人の割合をたずねたところ、4.3%となりました。とりわけ、知的障害のある人が結婚している割合はわずか1.4%でした。2010年の国勢調査を参考にすると、生涯未婚率は男性で20.14%、女性10.61%となっており、障害のある人の未婚の割合は男性で96.00%、女性では95.37%と、それぞれ4倍以上、9倍以上の差があります。
以上のような実態を改善・改革していくための4つのポイントを私たちは提言します。
1.家族依存の温床となっている扶養義務制度の改正(民法改正)
2.障害のない人と同等の暮らしを営める所得保障制度の確立
(障害基礎年金制度の拡充を中心に)
3.地域での自立した生活を支えるための基盤整備(人的・物的な条件整備)
4.障害のある人にもディーセントワークを
(労働と福祉の一体的な展開を具体化する社会支援雇用制度の創設)