2013.01.10
今年4月に施行される障害者総合支援法で、ホームヘルプや補装具支給など障害福祉サービスの対象者に「難病」が加わる。
公的支援のない難病患者は多く、期待は大きかったが、厚生労働省は先月、対象範囲を暫定的にパーキンソン病など国の調査研究助成対象の130疾患と関節リウマチとする方針を示した。国内に患者がいる希少疾患は数千あるとされる。
対象外となる患者団体は「病名で区切らず、生活実態から判断すべき」として国への働きかけを検討している。 【野倉恵、蒔田備憲】
◇病名だけで決めないで…患者らが訴え
同法に基づくサービス対象者は、市町村が医師の診断書などを元に判断するが、その基準となる厚労省方針は昨年12月に示された。
激しい疲労が続き、筋肉痛や睡眠障害を伴うことも多い筋痛性脳脊髄(せきずい)炎は対象とならなかった。慢性疲労症候群とも呼ばれるこの病気の患者会のNPO法人理事長、篠原三恵子さん(54)=東京都東久留米市=は、ほぼ寝たきりで、食事も外出も介助者が必要だ。
難病患者は、症状が変わったり診断が難しいなどの理由で身体障害者手帳を取得できない人も多い。このため現行の障害者自立支援法の対象にならず、福祉サービスについて全額自費負担したり、控えざるを得ないケースも多かった。篠原さんによると、同症候群の患者も例外ではない。
茨城県つくば市の女性(43)もその1人だ。都心で会社勤めをしていた31歳の秋、微熱が続き、突然、鉛のように体が重くなった。半年欠勤後に退職して帰郷。多くの病院を回り、診断を得られたのは2年前だ。
年末年始は自宅で過ごした。ほぼ唯一の外出は年明けの2日、自宅脇の公園に出掛けた母との散歩だった。「今の希望は、わずかでも仕事をして社会とつながっていると感じること。そのためにホームヘルプや就労支援の福祉サービスが受けられれば」と語る。
薬を服用しないと脱水症の危険に陥る「下垂体(かすいたい)機能低下症」を抱える弁護士の青木志帆さん(31)=大阪市=は「この病気は対象になったが、谷間に陥る人を無くすため、病名でなく支援が必要な状況かどうかでみてほしい」と指摘する。