2014.07.04
精神科病棟転換容認に強く抗議する
2014年7月4日
きょうされん常任理事会
厚生労働省が設置する「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」は7月1日の第4回会合でとりまとめを行ない、精神科病棟転換問題について、地域生活へ移行することを原則としながらも、現在入院している患者を対象とするなどの条件を付した上で、自治体と連携して病棟転換を試行的に実施し、その運用状況を検証するという旨の結論にいたった。
政府が試行事業という場合は予算のメドも立ち、実施が見込める事業を試行するわけで、いわば本格実施に向けたプロセスに足を踏み入れたことになる。すなわち今回の結論は、病院内を地域と呼ぶ看板のかけかえの制度化を宣言したものにほかならず、きょうされんはこれに強く抗議するものである。
とりまとめでは「精神病床を適正化し、将来的に不必要となる病床を削減する」との文言が盛り込まれたが、構成員からも指摘されたように、精神障害のある人の地域移行を進めるための住まいや働く場などの整備についての議論が薄かったことは否めない。これでは、将来の病床削減を謳っても絵に描いた餅に過ぎないと批判されてもやむをえない。
病棟転換を容認する構成員は、「リスクの大きい施策だ」と言いながら、そのリスクを犯してでも時限的措置とするなど条件を付して病棟転換に踏み切るべきだとした。しかし、病棟転換という人権無視の方策にどのような条件を付したとしても、障害のある人の自己決定と地域生活を謳った障害者権利条約とはまったく両立しない。いくら例外であることを強調しても、病院敷地内に居住の場をつくるという愚策に道を開いたという点では、障害分野の歴史に残る汚点となった。
そもそもこの検討会には25人の構成員がいるが、精神障害のある人が2人、家族が1人と当事者が極端に少なく、過半数の13名が医師である。当事者の構成員は全員、病棟転換に反対を表明したが、このような偏った構成の中では病棟転換容認が多数派となってしまい、「わたしたちのことを、わたしたち抜きに決めないで」という障害者権利条約のスローガンや、この問題に反対する全国の意見とは大きく乖離した結論にいたることは自明のことであった。
去る6月26日、日比谷野外音楽堂には病棟転換に反対する約3200名の当事者、家族、関係者が、障害種別をこえて集まった。障害者権利条約の実施をめざすこのエネルギーこそが多数派であり、これからのとりくみの源となる。厚労省はとりまとめを受け来年度の予算編成作業に入ることから、この問題は夏から秋にかけて具体化に向け大きく動き始める。
きょうされんはこの問題に反対する全国の多数派のみなさんと手をつなぎ、精神障害のある人の地域生活の拡充策を前提とした、いわゆる社会的入院問題の解消に向け全力を尽くしていきたい。