2012.09.01
日本障害者協議会常務理事 藤井 克徳
去る7月23日、首相官邸で第1回目の障害者政策委員会が開催された。障がい者制度改革推進会議(推進会議)との比較を中心に、その特徴を概観する。
第一は、二つの審議体の後継ということである。推進会議と以前の中央障害者施策推進協議会、これら二つの合流というニュアンスでとらえてもらってよかろう。
第二は、障害者基本法に明記された法定の審議体となったことである。閣議決定に留まった推進会議と比較して、新たな権限が備わるなど格上げということになる。
第三は、省庁との関係が深くなることである。新設の障害者政策委員会には、30人の本委員や専門委員に加えて、幹事という呼称で各省庁の障害分野担当者(課長クラス)が配属される。これら幹事は、お目付け役になるのか、それとも資料の提供などを含めて助っ人になるのか、どちらに軸足が置かれるかは現時点では何とも言えない。
第四は、引き続き「5年間の改革の集中期間」(2009年末~2014年度)に位置づけられていることである。法定の審議体に生まれ変わったのと同時に、「5カ年の集中」という時間的な要素がもう一枚重なっていることを押さえておく必要がある。
法定の審議体への格上げ自体は好感できるが、一方で法定ゆえの制約も少なくない。開催回数や開催時間などの面で推進会議ほどの柔軟性はなさそうだ。 次に、障害者政策委員会の役割や権限について確認しておきたい。
障害者基本法には「内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、障害者政策委員会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。」(第11条)「(障害者基本計画に関して)調査審議し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は関係各大臣に対し、意見を述べること。」(第32条)とあり、障害者政策委員会が先ず成すべきは障害者基本計画(基本計画)に関する意見具申を行うことだ。
もう一つは、これが中央障害者施策推進協議会とは大きく異なる点だが、「障害者基本計画の実施状況を監視し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告すること。」「内閣総理大臣又は関係各大臣は、勧告に基づき講じた施策について政策委員会に報告しなければならない。」(いずれも第32条)など、いわゆる監視、勧告、応答義務の機能と権限が明記されたことである。
ここで一つの疑問にぶつかる。障害者政策委員会は、基本計画しか関与できないのかということである。法律上はそうなっている。ただし、基本計画には幅があり、障害分野のあらゆる側面がその対象となるのである。逆に言えば、重要な要素をいかに漏れなく盛り込むか、そうすれば審議や監視、勧告の対象になるのである。
最後に、期待に応えられる障害者政策委員会としていくための最低の視点を述べたい。
言い古されたことかもしれないが、徹底して権利条約を礎とすることだ。個々の条項を尊重することは言うまでもないが、それ以外の二つの視点を強調しておく。
一つは、条約に34カ所も登場する「他の者との平等を基礎に」を念頭から離さないことだ。わが国の障害をもたない市民の平均的な暮らしぶり、これを正視しながらの論議を求めたい。
今一つは、Nothing About Us Without Us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)に磨きをかけることである。障害当事者が多数加わっている障害者政策委員会であり、その主体性がどこまで担保されるのか、少なくとも推進会議の実績は上回ってほしい。