2012.02.23
厚生労働省が障害者自立支援法の改正案を今国会に提出する。内容を見直すほか、法律の名称も変える。
支援法については、「廃止」が民主党政権の約束だったはず。2009年総選挙の政権公約であり、支援法違憲訴訟で原告と和解したときの合意文書にも盛り込まれている。
厚労省は改正案を「事実上の廃止」とするが、苦しい言い訳だ。現行法の枠組みを出ていない。
支援法は廃止し、障害者の権利を保障する新たな法律をつくる。これは司法の場で取り交わされた約束でもある。政府は守らなくてはいけない。
現行法は、自公政権下の06年に施行された。身体、知的、精神の障害ごとに分かれていた福祉サービスを一元化し、障害者の自立と就労を支援する。方向性はいいが評判はさんざんである。
当初はサービス量に応じて利用者負担を求める「応益負担」としたため、障害の重い人ほど支払いが増えた。「自立を妨げる」との反発が各地で広がり、障害者らが国を訴える違憲訴訟が相次いだ。
政権交代後、当時の長妻昭厚労相が廃止を明言。各地の違憲訴訟は和解となった。
今回、「改正」にとどめた厚労省の言い分はこうだ。支援法を廃止すると、自治体や事業者の負担が増えるうえ、新法制定には野党の協力が得られない。
改正案には、新たな理念に「共生社会の実現」と「社会的障壁の除去」を掲げる。現行法にある「自己責任」の色合いも消す。これで理解してもらえないか―と。
障害者団体から批判が続出している。改正案は、基本的には現行制度を存続させるものという。
たとえば、障害福祉サービスを利用する前提となる「障害程度区分」。精神、知的障害者では支援の必要度が低く判定されるなどの問題がある。本人のニーズの尊重も課題になっている。改正案では、施行5年後をめどとする見直しにとどまる。
政権交代で芽生えた利用者本位の試みが、生かされていないのも理解しがたい。
民主党政権のもとで新設された障害者制度改革の推進会議には、障害のある人が大勢加わった。当事者らによる部会が議論を重ね、新たなサービス支給決定の仕組みやコミュニケーションの支援など新法の骨格となる提言を、昨年夏にまとめている。これが改正案にはほとんど反映されていない。
厚労省はもう一度、部会の提言まで立ち戻ってもらいたい。