2012.10.05
障害者福祉制度の対象から漏れ、必要な支援を受けられない難病患者の苦しみを知ってもらおうと、当事者らが四日、参議院議員会館でシンポジウムを開いた。病を抱えながらの生活の厳しさを紹介し、来春施行される障害者総合支援法(改正障害者自立支援法)の問題点を提起した。 (小林由比)
患者や支援者、国会議員など約九十人が参加。障害者総合支援法は初めて、難病を障害者福祉の対象に加えた。対象疾患を政令で定める。治療法が確立されていない病気は五千~七千もあり、患者らは「病名にかかわらず制度の対象に」と期待する。しかし国は、難病政策の対象に指定する現行の百三十疾患を中心とする考えだ。
国の姿勢に危機感を抱く患者らは「タニマーによる、制度の谷間をなくす会」を結成。「政令で疾患が定められる前にこの問題を広く訴えたい」とシンポジウムを開いた。
筋力が低下する先天性ミオパチーを出生時から患う白井誠一朗さん(29)は、大学・大学院で社会福祉を専攻した社会福祉士だが、体力的にフルタイムで働けず、就労できていない。現行法上、福祉サービスの申請には身体障害者手帳が必要になる。ところが「病状の固定しない難病も多く、疲労や痛みは見た目にはわからないため、手帳を取得しにくい」という。白井さんは「既存の難病政策の枠組みを前提にせず、暮らすことの困難さを見て、必要な支援を申請できるようにしてほしい」と訴えた。
自己免疫疾患系の難病を四年前に発症し、その経験を書いた「困ってるひと」が話題となった作家の大野更紗さん(28)も「今生きている患者さんたちが何に困っているのかを出発点に、その人にとって必要なことを柔軟に支援できる仕組みを」と要望。「これまで声を上げることすらできずにいた患者さんたちにもその場を提供していきたい」と、当事者の声をすくい上げる制度への改革を呼び掛けた。