2012.07.01
日本障害者協議会常務理事 藤井 克徳
今年も早や折り返し点を過ぎた。障害分野の観点から前半期をふり返り、後半期を展望してみたい。その際に念頭に置くべきは社会全体の動きとの関係である。とくに政治の影響は少なくなく、障害分野もまた否が応でも「果たせない約束」とか「変えられない政治」といった今日の混迷と停滞の政治にさらされながらの展開となろう。
まず前半期であるが、最大のトピックは「障害者総合支援法」の成立である(6月20日の参院本会議での可決をもって)。一部とは言え難病が初めて本格的に福祉法の対象に加えられたり、障害のある人の意思決定の在り方の検討が法文の中で明記されるなど、いくつかの点で改善が図られた。しかし、基本合意文書や骨格提言からの乖離は甚だしく、全体的にみれば、「障害者自立支援法上塗り法」のそしりは免れまい。
もう少し突っ込むならば、少なくとも次の二点を押さえておく必要がある。一つは、足掛け9年に及ぶいわゆる自立支援法問題に決着がついたのかどうかということである。結論から言えば、ついていないと言ってよい。骨格提言の主要部分のいくつかは障害者総合支援法の附則で「3年後を目途に検討」とされ、見方によっては延長戦に入ったとも言えよう(後述)。
さらに言及しておかなければならないのが基本合意文書との関係であるが、こちらについてはとくに元原告と弁護団は承服していない。決着どころか、今般の動きを新たな運動の始発点にしようとする意思が固められつつある。
今一つは、官僚主導の復調である。政権政党の政治力の減衰は、一般的には野党の巻き返しになるはずだが、今の日本は違う。ここぞとばかり官僚が台頭してくるのである。今後の障害関連の政策決定への影響は必至で、それだけではなく推進会議・総合福祉部会などでようやく萌芽が出始めた"Nothing About Us Without Us‐私たち抜きに私たちのことを決めないで"の後退が懸念される。
次に、後半期の課題であるが、以下の3点は欠かせないように思う。その第一は、先にもあげた障害者総合支援法の附則に掲げられた検討事項の審議である。障害程度区分の見直しやパーソナルアシスタンス制度の在り方など骨格提言の主要部分のうちの9分野が検討項目に掲げられているが、審議体制や検討の方向性(目標)、ロードマップ(行程表)などは国会審議において明らかにされなかった。障害関係団体がまとまることの重要さと合わせて、骨格提言の段階的・計画的な実施を言明している政権与党の真価が問われよう。
第二は、障害者差別禁止法(仮称)に向けての骨格提言の水準がどうなるのかということである。来年の通常国会での立法化を睨みながら、既に20回以上の開催を重ねている差別禁止部会の骨格提言が今秋初めにも公表となる。内容面では、「合理的配慮を怠ることが差別に当たる」などが主柱となろう。他方で、差別禁止法の必要性についての市民啓発も重要となる。この点でのJDを含む障害関係団体の責任と役割は大きい。
第三は、新設の障害者政策委員会が順調に滑り出すことができるか、その下で年内に策定される新障害者基本計画(2013年度~2022年度)の出来映えがどうなるかである。これらはこの国の障害分野の近未来を占うものであり、推進会議で培われた審議手法がどこまで踏襲されるのかも注目される。
例年に増して重要さが増す後半期であるが、JDは政策委員会の下に設けた6つのワーキンググループなどがこうした政策動向に直接、間接に関与することが求められ、また運動面でも関係団体と連携しながら効果的な役割を果たしていかなければならない。