2010.11.18
◇「原則1割」に批判も
新たな障害者福祉法制度施行までのつなぎ法案となる障害者自立支援法改正案が17日、衆院厚生労働委員会で民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決された。発達障害を対象に明記し、サービス量に応じた負担から支払い能力に応じた負担を原則とする内容で、12月にも本会議で可決の見通し。早期成立を求める関係者も多い一方「原則1割負担の骨格を残している」として反発も残り、13年8月までの現行法廃止と新制度移行を目指す現政権に重い課題を突きつける。【野倉恵】
改正案のポイントはこのほか▽グループホームを利用する個人への助成▽障害児向け放課後型デイサービスの制度化▽相談支援体制の強化−−など。
福祉サービス利用の原則1割を自己負担とする現行法は06年施行され、憲法で保障された生存権を侵害しているとして障害者らが、全国14地裁に提訴した。
10年1月、原告側と政府は▽障害者の意見を踏まえずに法律を施行させ、尊厳を傷つけたのを政府が「心から反省」▽新法制定への障害者の参画
▽低所得者の負担軽減−−などの内容で基本合意、4月までに和解が成立した。
同月、障害者や家族らを中心にした政府の「障がい者制度改革推進会議」の総合福祉部会も、新法に向けた議論を始めた。
◇「合意と違う」反発
議員立法による改正案はこの動きとは別に提案され、通常国会で衆院を通過したが、鳩山由紀夫前首相の退陣で廃案に。「新法に向けた部会の議論の最中に情報提供なく進められた」として、同会議は遺憾の意を菅直人首相に伝えた。
「基本合意にかかわらず私たち抜きに進めた。1割負担の骨格も残る」(同部会メンバーの藤岡毅弁護士)というのが元原告らの反対理由だ。
現行法は「サービス費用の9割を(国と自治体が)給付」と規定。負担軽減策が繰り返され、実際は自己負担割合が1割未満だったケースも多い。
一方、改正案は補助部分について「家計の負担能力などを配慮して政令で定める額」を給付するとする一方「百分の十」の自己負担があり得るとの趣旨の条文もある。この点について、「現行法以上に1割負担を明記し、家族の所得が合算されるため、負担軽減などにつながらない恐れがある」(同)と元原告らが反発を示していた。
総合福祉部会は近く新法に向けた方向性の骨格を示す予定だが、メンバーの一人は「改正法案を巡る混乱で、不安な当事者も多い。政府与党はどう応えるのか」と、政権交代の真価を問いかけている。