2009.04.02
◇「生きる権利を侵害」「仲間のために闘う」
障害者自立支援法が福祉サービス利用料の1割を利用者に原則負担させているのは障害者の生きる権利を侵害し違憲だとして、知的障害がある奈良市の小山冨士夫さん(52)が1日、国と奈良市を相手取り、負担の廃止などを求めて奈良地裁に訴えを起こした。この日、小山さんを含め全国10地裁で計28人が一斉に提訴した。同法を巡っては、原則1割負担への批判が相次ぎ、政府は先月31日、改正案を閣議決定している。【高瀬浩平】
弁護団によると、小山さんは知的障害者通所授産施設「コミュニティワークこッから」(奈良市)に通い、心身のケアや食事、入浴などのサービスを受けながら、紙すきなどの仕事をして月1万3000円の賃金を得ている。06年4月の同法施行以降、利用料が一部負担になり、減免措置を受けて現在、月3000円を支払っている。このため、手元に残るのは1万円だけだ。
訴状によると、小山さんは、06年4月から今年3月の利用料と慰謝料計19万円の支払い▽利用料負担を0円にするよう求めた申請を却下した奈良市の処分取り消し▽市に対する負担免除の義務付け−−などを求めた。小山さんは提訴後に記者会見し、「障害者が仕事へ行くとお金を払わないといけないのはおかしい。他にも苦しんでいる障害者や全国の仲間のために裁判を闘います」と述べた。
奈良市障がい福祉課は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。県障害福祉課によると、市町村が独自に利用者の負担を減免することはできるが、県内39市町村では例がないという。
同法は施行以降、障害者から「負担が重すぎる」などの批判が続出。昨年10月末には全国で29人が提訴した。改正案は、障害者が障害福祉サービス利用料の原則1割を負担する「応益負担」の規定を撤廃し、家計の負担能力に応じた「応能負担」を原則としている。