2012.02.08
厚生労働省は8日、廃止予定の障害者自立支援法に代わり、今国会に提出を予定する新法案の概要を、内閣府の障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会に示した。厚労省案は自立支援法の名称変更こそ明記しているものの内容は現行法の一部見直しにとどまり、実態は「自立支援法改正案」と言える。障害を持つ当事者のメンバーが多い同部会では「看板の掛け替えにすぎない」などの反発が相次いだ。所得の低い障害者が福祉サービスを利用した際の軽減措置を現行通り続ける一方、同省案はサービスの「原則無料化」など、昨年8月に総合福祉部会が提言した内容はことごとく見送っている。
8日の同部会で佐藤久夫部会長(日本社会事業大学教授)は「提言した60項目のうち48項目は触れられてもいない。現行法のマイナーチェンジに過ぎない」と苦言を呈した。他のメンバーも「100%提言を無視された」と不満の声を上げた。も13年8月までに自立支援法を廃止し新たな福祉法制を実施する」。政府は10年6月、その年の1月に自立支援法の違憲訴訟原告団と結んだ基本合意に基づき、同法廃止を閣議決定した。それが厚労省案には民主党がマニフェストに掲げ、同部会も求めた「廃止」の文言がない。
同省によると、現行法の完全廃止に踏み切れば、現在約80万件のサービスを受けている障害者約60万人の支給決定をやり直す必要があり、サービス利用を続けられない人が出る可能性がある。また、自民、公明両党の賛成は得られず、成立も見込めない。
そこで同省は、中身は現行法の一部見直しにとどめつつ、法の理念や名称の変更をもって「廃止」と位置づける苦肉の策で乗り切る構えに転じた。8日の部会で厚労省の津田弥太郎政務官は「根幹の名称改正などでマニフェストに掲げた『廃止』になる」と説明した。
それでも肝心の名称は未定。厚労省案には「原則無料化」「サービスを受ける際は障害程度区分に基づかず、本人の意向が最大限尊重される仕組みにする」といった、同部会の提言の骨格部分はほとんど反映されていない。
同省は「段階的・計画的に実施する」と強調するが、年次を定めた見直し規定は一部だけ。全国盲ろう者協会理事の福島智東大教授は「弱者の立場に立って政権を取ったはずだ」と厳しく批判する。