2013.06.26
障害のある人々が選択できるこの国の未来を
―第183回通常国会の閉会にあたって―
2013年6月26日
きょうされん
理事長 西村 直
本日6月26日、第183回通常国会が閉幕した。
本国会では、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の成立をはじめ、障害者雇用促進法、生活保護法、道路交通法、精神保健福祉法、成年被後見人の選挙権回復等のための公職選挙法改定など、障害のある人々の人権等に係わるさまざまな重要法案が審議された。
障害者差別解消法については、内閣府に設置された障がい者制度改革推進会議・差別禁止部会及び障害者政策委員会・差別禁止部会がまとめた意見書の内容とはほど遠く、法律名も差別の「禁止」ではなく「解消」とトーンダウンしたばかりか、3年後の施行(見直しはさらにその3年後)という、基本的にはきわめて不十分な法案であった。しかし、わたしたちは差別禁止に係わる法制をまずは確立することが先決であるという立場でこの法の成立を求めた。
障害者雇用促進法改定案については、差別禁止条項を盛り込み、精神障害者を法定雇用率の算定の基礎に加えるという前進面はあったが、後者についてはその施行を5年後とし、さらにその5年後まで経過措置を設定するというもので、精神障害のある人にとっては実施までの期間があまりにも長すぎる。4月より法定雇用率(民間)が2.0%に引き上げられたものの、これではますます障害者雇用制度に関する先進諸国との格差がひろがるばかりである。
生活保護法改定案については、わたしたちきょうされんは明確に反対の立場を表明してきた。その理由は、生活保護を必要とする人々を制度から締め出す改悪に他ならず、多くの障害のある人々がその対象となるからである。作業所等を利用する障害のある人の1割が生活保護を受給しており、憲法第25条に基づいても、とうてい容認できるものではない。結局、反対世論にも影響されながら国会会期末の混乱の中で廃案を実現することができた。しかし「改悪の火種」が消えたわけではなく、秋の臨時国会での再浮上は必至とされている。わたしたちは、引き続き強い覚悟をもって改悪を許さない運動を続けていくことを表明する。
道路交通法については、てんかんや統合失調症など、特定の疾患名を挙げて免許の取得や更新時の虚偽申告に対する罰則を設けるなど、これらの当事者を他の人とは異なる扱いとする内容を含む改定が行われた。一連の交通事故の犠牲者とその家族の心情を十分に踏まえつつ、もう一方では「障害者は犯罪や事故を起こしやすい」といった偏見や差別を助長することがあってはならない。
精神保健福祉法については、保護者制度を廃止するという歴史的な改正をしたにもかかわらず、その一方で、医療保護入院における家族同意を要件とすることで、改正の意義を損ねてしまった。「人権保障の観点から、第三者機関による監視及び個人救済を含む適切な運用がなされることを担保する規定を整備すること」とした骨格提言を想起すべきである。
以上のように、本国会では、障害のある人に係わる多くの法案が可決・成立したが、総じて歓迎できる水準にないというのが率直な感想である。なお、納得できない問題のひとつに、第183回通常国会の会期中に(2013年1月28日から6月26日)、内閣府障害者政策委員会が一度も開催されていないことがあげられる。このことは、制度改革の鈍化を表すものであり、上記の法案審議にも少なからず影響したと言えよう。
先にも述べた通り、本国会で公職選挙法が改定され、成年被後見人の選挙権が復権した。これは、障害のある当事者らの訴訟によってかちとった成果であり、来たる7月21日が投票日と見込まれている第23回参議院選挙から適用されることになる。これにより、被後見人となっている障害のある人たちが、久々に投票所に足を運ぶことができる。
参政権の行使で、自らの意思を政治に反映させることは重要な国民主権のひとつである。あおり立てるような憲法改正の動きや、来春に予定している消費増税問題などは、障害分野にも深く関わってくる。
来たる参議院選挙では、堂々と胸を張ってこの国の行方の選択に参加しようではないか