2014.07.15
2014年7月15日
きょうされん奈良支部
支部長 麻 まり
精神障害者の福祉医療制度適用について奈良県決定に応じた12市の実施を求める
2012年に精神障害当事者や家族、支援者が連携し精神障害者の福祉医療を実現する奈良県会議を結成、精神障害のある人に対しても福祉医療制度の適用を求める運動を各自治体に対して行きた。身体障害者や知的障害者の施設も加盟するきょうされん奈良支部も運動開始当初から応援や協力を行ってきた。
2013年には、奈良県が精神障害者の生活実態調査を行い527人から回答を得た。「実現会議」でも1100人にのぼる精神障害者の生活実態調査を行っている。さらに、奈良県が2009年に実施した障害者の生活・介護に関する実態調査により、他の障害種別と比べ、就労している人の割合が極めて少なく、年間収入100万円未満が61%。精神科以外の他科受診は6割を越え、生活習慣に起因した疾患が多い結果が出され、医療費が生活を圧迫していることが明らかになった。
「精神障害者の福祉医療を実現する奈良県会議」では、本アンケート調査及び参考資料とした各種調査により、精神障害者の生活が厳しい状況にあることは明らかであり、精神障害者への福祉医療制度適用の必要性は高いと指摘した。
切実な当事者・家族の声に真摯に応え、県知事が「手帳1級・2級所持者に対し、10月に自動償還払い」を決定したが、2014年5月に市長会が「手帳1級のみ、10月実施は不可能」と当事者、家族の思いを無視した意見書を県へ提出した。
本年は、国連が採択した障害者権利条約にわが国も批准した年である。第25条では「締約国は、障害者が障害に基づく差別なしに到達可能な最高水準の健康を享受する権利を有することを認める。」と定められている。身体障害、知的障害は対象となる福祉医療制度に、精神障害だけが「蚊帳の外」に置かれた状態は、「平等、無差別」を謳う障害者権利条約に反するものである。
「私たち抜きに私たちのことを決めないで」が条約採択過程において当事者のスローガンであった。精神障害者・家族の長年の悲願をないがしろにして、全国に誇れる制度を弱めることは容認できない。
精神障害者とその家族は精神疾患に対する正しい理解が進まない中で障害を隠さざるを得ない生活を強いられてきた。きょうされん奈良支部は、県内12市でも精神障害者が置かれてきた現状と生活実態に真摯に向き合い、県の判断を実りあるものにするよう強く求めるものである。