2009.09.19
長妻昭厚生労働相は19日、同省内で記者団に対し、福祉サービスを利用する際に原則1割の自己負担を求める障害者自立支援法を廃止する方針を明言した。
また、「連立の中で詳細な合意をいただく。どういう制度にするかも今後詰めていく」と述べ、現行制度に代わる新たな障害者福祉制度の設計に着手する考えを示した。
同法は自民党、公明党が圧勝した05年9月の衆院選直後の同10月に成立し、1年後に完全施行された。それまでの支援費制度が所得に応じてサービス利用料を負担する「応能負担」だったのに対し、同法では利用したサービスに応じて定率で負担する「応益負担」への転換が図られた。
国の財政負担軽減などが狙いだったが、もともと経済的に苦しい障害者の負担増につながる制度変更には当初から根強い反発があった。08年10月には東京、大阪など1都2府5県の障害者が「原則1割負担は障害者の生きる権利の侵害」などとして国や自治体を相手取り、全国8地裁に負担廃止などを求めて提訴した。
こうした事態を受け、麻生太郎内閣と自民、公明両党は以前の「応能負担」に改める改正案を3月に国会提出したが、衆院解散に伴い廃案となった。
民主党は「障害者福祉制度を抜本的に見直す」として、衆院選のマニフェストで同法の廃止を明記。費用を応能負担とする「障がい者総合福祉法」(仮称)を制定することを盛り込んでいた。
また、長妻氏は19日、同省内で副大臣・政務官4人による「政務三役」の初会合を開き、生活保護の母子加算の復活を年内に行う方針を改めて確認。復活時期に応じた工程表を複数案提示するよう関連部局に指示した。
また、長妻氏は、10月にも復活させる生活保護の母子加算の財源に今年度予算の予備費を充てる案について、「選択肢の一つだが、ほかにもある。一番早い方法を検討している」と述べた。
【ことば】障害者自立支援法
「小泉改革」の一環として05年10月に成立した。身体、知的、精神の3障害に対する支援を一元化するとともに、施設や事業の再編を図り、就労支援を強化して障害者の自立を促すのが目的。収入に関係なく利用料の原則1割を負担しなければならないことや、施設への報酬が事実上減らされたことから、利用者や地域の作業所関係者らが撤廃を求めている。