2012.02.22
障害者自立支援法を廃止して来年8月までに施行する予定の「障害者総合福祉法(仮 称)」の厚生労働省案について、障害者や福祉関係者の間で批判が高まっている。自立支援法の全面見直しを約束した民主党の2009年衆院選マニフェスト (政権公約)などに反するというのが大きな理由。九州でも再検討を求める動きが相次ぎ、関係者は「厚労省案を認めれば、障害者も参加して検討してきたこれ までの努力が無駄になる」と反発を強めている。
自立支援法については、障害者が受ける福祉サービスに原則1割の自己負担を求めたことを問う違憲訴訟が全国各地で行われ、国は10年1月に和解。自立支援法訴訟団と「自立支援法廃止と新法制定」を基本合意した。
国は障がい者制度改革推進会議を設けて同年4月、障害当事者をメンバーにした総合福祉部会で新法の検討をスタート。18回の会議を経て昨年8月、骨格提言を厚労省に提出した。
だが、今月8日に厚労省が公表した法案には、骨格提言60項目のうち何らかの形で内容に触れたのはわずか3項目。障害者の範囲については、難病の一部を含 むとしたものの、提言した障害のあるすべての人とはしていない。サービス支給についても、現在の障害程度区分に代わる新たな支給決定の仕組みが求められた のに対して「法の施行後5年をめどに、障害程度区分のあり方について検討を行い」などと、現行制度を前提として先送りする内容になっている。
福岡市では21日、障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす福岡の会や、小規模作業所・事業所などでつくる「きょうされん」(旧・共同作業所全 国連絡会)福岡県支部などが、同市の衆院議員事務所を訪ね、厚労省案の再検討を要望。「違憲訴訟での基本合意がほごにされる」などと訴えた。障害者の生活 と権利を守る同県連絡協議会の石松周会長は「障害当事者も一緒に論議をしてまとめた骨格提言を踏まえ、政府案をまとめてほしい」と話した。
長崎県でも、障害者団体代表らが国会議員5人に面会して党内論議を要請済み。NPO法人・ロバの会(同県諫早市)の畑山裕詩理事長は「厚労省案は、自立支援法の一部改正。名前だけ変えて中身を伴うものではない」と批判している。
=2012/02/22付 西日本新聞朝刊=