2010.01.13
◆障害者権利条約批准へ法整備めざす 夏めどに制度案の骨格 改革推進会議が初会合
障害者自らが制度作りに参加する政府の「障がい者制度改革推進会議」の初会合が12日開かれ、今夏をめどに制度改革案の骨格を示すことを決めた。障害者の差別を禁じた国連の障害者権利条約を批准するための国内法整備を目指す。政権交代で廃止が決まった障害者自立支援法にかわり、福祉サービスの利用者負担を決める制度の論議も本格的に始まった。(中村靖三郎)
改革推進会議のメンバー24人のうち14人は、障害のある人やその家族ら。福祉サービス利用の際に原則1割の自己負担を課す自立支援法などが当事者不在でつくられ、強く批判されたことから、障害者らが主体的に制度構築に参加する態勢とした。
この日の会合では、障害者施策を担当する福島瑞穂・内閣府特命担当相が「改革の具体的な検討を進めていくための、いわばエンジン部隊」と会議を位置づけた。
そのうえで福島氏は、障害者施策の基本理念を定めた障害者基本法の抜本改正▽障害者自立支援法に代わる障がい者総合福祉法(仮称)▽障害者差別禁止法制――の3点について、夏までに骨格を示す方針を提案した。いずれも障害者権利条約の批准に必要だとして障害者団体などが対応を求めていたものだ。
最終的には会議の方針を踏まえ、全閣僚でつくる「障がい者制度改革推進本部」(本部長・鳩山由紀夫首相)を経て、基本方針を閣議決定する考えだ。同本部では、当面5年間を改革の集中期間として、関係省庁の施策の見直しを進めていく。
同会議で議論すべき課題は山積している。この日は、事務局トップで障害がある東俊裕・同会議担当室長=内閣府参与=が大枠の論点を示した。その内容は、「障害」や「差別」の定義をどうするのかといった根本的な問題から、虐待の通報義務者の範囲など具体的なものまで約100に上るという。
一方、障害者自立支援法を廃止した後の新制度のあり方では、同法の違憲訴訟の原告団らと厚生労働省が今月7日に合意した基本文書に論点が盛り込まれた。原告らの(1)市町村民税非課税世帯には利用者負担をさせない(2)介護保険の優先原則を廃止(3)実費負担の早急な見直し――などの指摘をもとに、厚労省が利用者負担のあり方などを検討することが明記された。
ただ、厚労省で進める検討と推進会議の議論との役割分担は明確ではなく、今後の意見調整が課題だ。
今後は月2回程度の協議を予定している。初会合は会場の都合で一般傍聴が認められずに障害者団体から批判が出たことから、毎回、会議の模様をインターネットで配信して公開していくことも確認した。