2010.11.18
またもや真にわたしたちの声を聞かなかった「改正」案
障害者自立支援法「改正」案の衆議院可決にあたっての声明
1 1月17日午後3時25分、障害者自立支援法(以下、自立支援法)の一部を「改正」する法案(以下、「改正」案)が、衆議院・厚生労働委員会において可決されました。それは、委員長による提案に対して野党2名の意見表明以外、まったく審議されないままのわずか10数分の出来ごとでした。そして本日(18日)、衆議院・本会議において、審議なしの採決で、民主党・自民党・公明党などの多数で可決されました。
「きょうされん」は、ここに強い憤りと深い疑念とともに、新たな決意を表明するものです。
●「改正」案可決までの経緯と問題点
第1には、またしても「改正」案が政治の駆け引きの道具とされたことです。補正予算審議のための委員会開催などを条件に「一言一句を変えることなく『改正』案を再上程せよ」という自民党の強硬な圧力に屈した民主党は、6月の国会で廃案になった「改正」案を無修正のまま再上程しました。
先の国会では、法案の内容の問題に加えて、障害のある人と家族・関係者の意見をまったく聞かずに「改正」案を強引に上程したことが大きな問題になりました。9月以降、民主党・自民党・公明党の3党は、数多くの障害者団体のヒヤリングを実施し、そこではさまざまな意見がだされました。しかし、これらヒヤリングでだされた意見をまったく反映することなく、一言一句変更なしに「改正」案を上程・可決したことは、当事者の声を尊重するポーズをとりながら、結局、その声を無視したも同然です。
第2には、2013年8月を期限とした自立支援法の廃止と新法制定を約束した政権与党が、自立支援法の延命に手を貸し、復活の道をつくる法案の可決に賛成したことです。そもそも「改正」案の原案は、自公政権時代に厚労省が作成し、2009年の国会でも廃案になりました。つまり、2度の廃案を経て再び上程された「改正」案は、自公政権が制定した自立支援法を前提としているため、同法の延命、さらには復活を狙うことに主眼があり、現政権の自立支援法廃止と新法制定の基本方針とは相反するものです。しかも「改正」案は施行期日が2012年4月とされており、新法施行までわずか一年余しかありません。このことは、新法への「つなぎ」が本当の狙いではなく、2012年4月の介護保険法の定時改正に照準をあわせたものと言わざるをえません。現政権は、自立支援法訴訟の「基本合意」を反故にし、介護保険の統合に方針転換してしまったのでしょうか。
第3には、「改正」案が、障がい害者制度改革推進会議や総合福祉部会の議論を制約し、その流れが歪められてしまうことへの懸念です。今回の採決にあたっては「障害保健福祉の推進に関する件」という「委員会決議」が可決されましたが、その内容は、民主党・自民党・公明党による調整の結果、2013年の自立支援法の廃止と新法制定をあいまいなものにしてしまいました。
●わたしたちの決意と課題
「改正」案は、これから参議院での審議に移ります。「良識の府」といわれる参議院であるならば、徹底した審議によって「改正」案の本質問題を明らかにし、廃案にすべきです。
わたしたち「きょうされん」は、引き続き多くの関係団体とともに、「改正」案の廃案を求める運動を強く推しすすめ、自立支援法の廃止と新法制定、そして権利条約の批准をめざした障害者制度改革をすすめる運動を大きく前進させることを決意します。
2010年11月18日
きょうされん
理事長 西村 直