2012.10.01
障害者に対する差別の解消に向け、来年の通常国会に提案予定の「障害者差別禁止法案」について、内閣府障害者政策委員会の差別禁止部会が意見書をまとめた。
当事者、関係者、有識者らが25回もの会合を重ねた成果であり、貴重な内容を含んでいる。国民的な議論を盛り上げて法案を作成し、同法の制定により共生社会の実現を図りたい。
意見書が指摘しているように、国民は好んで差別しているわけではない。しかし、何が差別になり、どのような配慮が必要なのか、十分に分からないのが現状だ。その結果、多くの障害者の人格が傷つけられ、個性や能力を発揮する機会が奪われている。
そこで意見書は、具体的な「社会共通のルール」「物差し」を提示した。障害者差別を、車いす利用者のタクシー乗車拒否などの「不均等待遇」と、建物入り口にスロープがないなどの「合理的配慮の不提供」に2分類。
公共的施設・交通機関、情報・コミュニケーション、商品・役務・不動産、医療、教育、雇用、国家資格、家族形成、政治参加(選挙など)、司法手続きについて具体的な差別内容を示した。ガイドラインの作成や、円滑な紛争解決方法の創設も提言した。
教育では、現行の教育が障害の種類と程度によって定められた基準に該当する場合には、原則として特別支援学校に就学先を決定する仕組みになっていると指摘。こうした「原則分離の教育」は不均等待遇に当たるとし、障害者権利条約で規定され、欧米諸国で進められている学習者の多様なニーズを認めた「インクルーシブ教育制度」の確保を強く求めた。
雇用では、福祉的就労であっても労働者性が認められる事例に労働法を適用しないのは不均等待遇であるとした。司法手続きでは、判決文など訴訟関係書類の点字化、刑事施設での障害特性に応じた処遇などが必要な合理的配慮として挙げられている。
これらは、障害者権利条約の規定や先進国の取り組みを踏まえた指摘だ。最大限尊重すべきである。
今後の法案作成では、公聴会などで各現場、関係者、国民の意見を聞き議論を深めたい。懸念されるのは政府の対応だ。障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会による障害者総合福祉法骨格提言はほぼ無視された。こうした対応は許されるものではない。