2011.08.01
改正障害者基本法が成立した。民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げた障害者福祉政策の抜本見直しの基本方針となる。障害があっても地域で当たり前に暮らせる社会の実現に向けた改革の一歩としたい。
今回の改正は、委員の過半数を障害者とその家族が占める「障がい者制度改革推進会議」が関わったのが特徴だ。法の目的として「障害の有無によって分け隔てられることなく共生できる社会を目指す」と規定。自立や社会参加をうたった旧法に比べ、権利面をより強調した。
この考え方に基づき、新しく盛り込まれた項目もある。刑事事件で障害者が取り調べや裁判を受ける際には意思疎通の手段確保を求めた。知的障害者は質問の意味が分からず安易に事実関係を認めてしまうことがある。公平な司法手続きを保障するには必要な措置だろう。
また、国や自治体に対し障害者への防災対策を義務づけた。東日本大震災で災害情報の伝達に不備があった反省を踏まえたものである。
一方、推進会議の出した提言内容からすれば、法律はトーンダウンした感が否めない。
例えば条文の中で目立つ「可能な限り」という文言だ。学校で障害のある子とない子が共に学べる環境整備や、どこで誰と生活するかという選択の機会の確保など重要な条文で使われている。十分な予算確保など、今後克服すべき課題が多いことを示している。
政府は国連の障害者権利条約の批准を目指している。基本法に続き、今後は障害者への差別を禁止する法律や障害者自立支援法に代わる新法の制定に向けた動きを本格化させる。高く掲げた理念が色あせることのないように実効性ある法律をつくってもらいたい。