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生活保護法改正案が6月26日、参院での首相問責決議可決の余波で廃案となりましたが、8月に生活保護基準引き下げの第一弾が実施されました。受給者や支援団体が全国的な集団審査請求・訴訟を起こす運動を始めています。
ここで、生活保護について考えていきたい思います。
(1) 障害のある人にとっての生活保護
障害のある人の98.9パーセントが年収200万円以下の働いても生活の維持が困難なワーキングプア状態であり、障害のある人の生活は「本人の我慢」と「家族への依存」で成り立っている状況です。(2012年きょうされん「障害のある人の地域生活実態調査」)
障害のある人は、全国平均に比べ比べ6倍以上の受給率であり、とりわけ精神障害がある人は20%が受給しています。生活保護は障害のある人のきわめて厳しい所得状況を下支えしている重要な社会保障となっています。
② 生活保護が問題なのではなく、日本の貧困が問題。
民間事業所で働くサラリーマンの平均賃金は1997年をピークにどんどん下がっています。また、20~24歳の男女とも半数近くが非正規社員で、賃金が安く、短期間雇用や医療保険自己負担などの経済的な困難さを抱えています。収入の減は、政府の政策によるものであって、個人の責任によるものではありません。
③ 外国と比べてみると?
生活保護を必要とする状態にある人のうち、実際に利用している人は日本では15%~18%に過ぎません。ヨーロッパ先進国では、90%以上が利用されており、イギリスなどでは、保護の申請用紙を郵便局などに置き、郵送で手続きが出来ます。
また、生活保護費のGDP(国民総生産)における割合は0.5%で、OECD(経済開発機構)加盟国平均の7分の1に過ぎないため、国の財政を生活保護費が圧迫するという論理は成り立たないといえるでしょう。
④ 受給者だけの問題か?
生活保護基準が下がれば、最低賃金も下がり、住民税の課税最低限にも影響します。就学援助制度(低所得世帯の教育費等の補助)や、国民健康保険料減免制度など社会保障制度の適用上限も切り下げられてしまいます。受給者だけではなく、国民全体に影響することだと言えます。
⑤ 権利として
憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記しており、この具体化が生活保護制度となっています。
11月1日には、他の運動団体との共催で学習会を企画しています。ぜひ、一緒に考えて見ませんか?(島耕治)