「見えないけれど観えるもの」著者:藤井克徳
きょうされん常務理事、日本障害者運動の牽引者の1人である藤井克徳さんの新刊です。
きょうされん広報誌『TOMO』の記事や、他の機関誌(紙)などの記事を抜粋しています。
長編ではなく短編集で読みやすくなっていますが、かなり内容が難しいです。障害者分野でかなり勉強しておかなければ、頭に内容がきちんと入らないし、著者もここは掌握していますか?と聞いてきます。著書を読みながら、片手には辞書的な物が必要でした。
始まりには「わが国十何万の精神病者は、実にこの病を受けたるの不幸の外に、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものと言うべし」呉秀三(1865〜1932)の一文が記されています。明治時代の障害者施策が不十分であると言っています。そして現代に至っても変化はみられません。こうした中できょうされんや他の団体、藤井さんたちが如何に現日本へ挑み、何度も壁にぶつかって行きながらもあきらめない様子が読み取れると思います。
作業所で働く職員の劣悪な環境や、作業所への補助金問題、作業所へ通う障害者の賃金の低さ、政府の障害施策対応の不甲斐なさ、など様々な問題が記されています。
作業所の職員はそれでも「やりがいがある」89%、政府に対しては「どんな運動をするか」ではなく、「誰と運動するか」を考え行動する、全国から「まだまだ倒れるわけにはいかないぞ」という力が湧き起こっているように感じます。
この著書をより多くの方に読んで頂きたい、またこの著書を読んで他者に働きかけてほしい、書く立場に立っていろいろな事に挑戦するときの踏み台になってほしいと著者が希望されています。ぜひご一読をお願いします。
前 史範